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フリージアのsingerのレビュー・感想・評価

フリージア(2006年製作の映画)
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とりあえず、ずーっとぼんやりしていてテンションが低い。
その中で、時折生々しく、ギラリと鋭利な描写がチラチラと危険な光を放つ。
刃こぼれしたナイフのように。
そういう薄くて淀んだ緊張感が淡々と続いて行く。

暴力的な描写や、鮮血がほとばしるシーンが多いので、やはり観る人を限定する作品だと思うし、
登場人物たちが動いて行く、その「理由」の部分がぼんやりと霞んでいるため、ストーリーに惹かれるような魅力は無い。
ただ、その無気力で虚ろな雰囲気に、手招きされているような印象がありました。
個人的には嫌いでは無いですけど、もう少しストーリーに求心力が欲しかったと思います。

題材としては、面白い切り口だなぁと思いました。
「敵打ち法」によって、報復行為が合法になっている世界の話というだけでも、何となく話が幾らでも広げられそうな感じで、
観ていてワクワクしたのですが、その良い題材を上手く生かせていないような気がしました。

でも、ラストは良かったです。
展開ではなくて、シーンそのものですが、だからこそ、そこへ至る過程の物足りなさが勿体ないなぁと思いました。

キャスト陣に関しても、大きく印象には残らなかったですね。
玉山鉄二にしても、挑戦的なキャラクターだと思うのですが、悪く言うと演技しなくても成立してしまうような役というか、
むしろ、いかに演技しないかがポイントになるようなキャラだっただけに、評価が難しいところですね。
それでも、佇まいは作品の中では映えていたと思います。
西島秀俊やつぐみといった、わりと実力のある演技派にしても、この作品では雰囲気を伝えるのに徹していたような。
というより、それしか選択肢が無かったかのようにも感じました。

音楽は良かったですね。
熊切監督の作品には欠かせないバンド、赤犬によるスコアが作品によく合っていました。

野狐禅の竹原ピストルも出演してます。
彼も「青春金属バット」で熊切チームの一員となったのかなと。

熊切和嘉作品では、「アンテナ」あたりもちょっと観てみたいなぁと思いました。
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🎦こちらは、2008年1月13日にブログに投稿したレビューです。
原作の良さを上手く映像化出来ていなかったのかなぁとは思いますが、それでも陰鬱な世界観がずーっとキープされていて、そういう点では映画的ではあったのかなと。
しかし、熊切和嘉監督。
最近でもエッジの尖った作品を相変らず撮ってらっしゃるようで、
その辺とのトコは”貫いてるなぁ”と感心させられました。
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