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市子のsingerのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.6
1年のうちで、どうにもこうにも、タイミングが合わなくて、映画館で観れなくて。
「あー、やっぱり、映画館で観ておけば良かったなぁ」と。
そんな後悔をしてしまう映画がある。

この「市子」も、そんな作品だったなぁ。

杉咲花さん。
今年の日本アカデミー賞でも、優秀主演女優賞に選ばれていて、
その演技は、それに相応しいものなんだろうなぁと期待して観ていたけど、
もう、本当に、その通りで、素晴らしい演技でした。

瞳が凄かった。
その「市子」が持っている、心の深さ。
そして、その深みに居るからこそ、なんだか周りが勝手に踊っているように感じている。そんな儚さの極地を、ただ、ぼんやりと見ているだけのような、そんな「瞳」がとても印象に残りました。

でも。
正直に言うと、先月に観た「52ヘルツのクジラたち」での演技も、とても良かったから、ちょっともう、甲乙付け難いというか、そんな感じで。
なので、先に「市子」の方を観ておけば良かったなぁと、そう思えてしまいましたね。

この「市子」は、ミステリーの要素も含めつつ、主人公・市子の失踪から、その行方を追っていく中で、その関わった人物の過去を、時系列を巧みに交錯させて描いていくというものだったので、最後までとても見応えがありました。

そして、邦画好きなら、もう唸ってしまうような豪華なキャスト陣。
若葉竜也さんと、中田青渚さんが絡むシーンなんかは、今泉力哉監督の「街の上で」での共演を思い出してしまったし、渡辺大知さん、宇野祥平さんといった、曲者なポジションの役者さんたちも、その存在感をしっかり出してたし。
後、みんな関西弁が上手だなぁと思って調べてみたら、主演の杉咲花さんと、若葉竜也さん以外の主要キャスト陣は、みんな関西出身だったりして、その辺りを含めて、キャスティングはとても良かったなぁと思いました。

やっぱり、とても見応えのある作品だったので、映画館で観ておきたかったなぁと思ったけど、今回は早い段階で、配信で観れたのは嬉しかったですね。
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