kou

恐怖分子のkouのレビュー・感想・評価

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.0
《空虚と孤独を描く》
ある一見すると関わりのない人達が、ある些細な行動が元になって悲劇につながっていく。エドワード・ヤンという監督は、底の知れない不安や孤独というものを抱える人間を描く監督なのかもしれない。今作も見る人の心をかき乱すような、忘れることが出来ない内容であり、とても素晴らしい作品だった。

今作では、病院で働く男、そして小説を書いている妻。その妻の上司、警察から逃れる少女。それを映すカメラマン。などの登場人物が、ある1つの電話から、とてもかすかな繋がりで、悲劇に繋がっていく。今作に出てくるのは近くにいる人との関係に上手く言っていない人達だ。夫と妻の関係も、夫が全く妻の事を理解していない。そんな崩れそうな関係性が、ある電話から崩れていく。

とても少ない台詞、そして全てを映さないカット。観客は無いものに対して想像力を働かせ、この映画を補完していく。それはとても不安を煽るもので、どうなっていくのかわからないスリリングさがある。また、観ていて怖いのだ。それは観ている側の心のなかにある、どこか空虚な不安や、孤独というものを明らかにしていくからなのかもしれない。素晴らしい一作だった。
kou

kou