るみ

ロスト・イン・トランスレーションのるみのレビュー・感想・評価

3.9
35㎜フィルム鑑賞
この作品を映画館で観られたことがとっても嬉しい🥹
公開当初、DVDのレンタルを待ち望んで観たものの「よくわからない大人の映画」という印象だった作品。
20年の時を経て改めて鑑賞したら、「こんなに心情を説明してくれていたのか…!」と驚愕。
友人に電話をかけて泣いているシャーロットの姿、仕事でも家族ともなんとなくずれてしまってしっくりこないボブの姿、それだけでもう十分なほど描かれていたのに。
家庭があったり、仕事で成功して大きなお金を手にするようになったり、子供ができたり。
そういう何かを手にしても行き詰まったり迷ったり。
しかもそれが年齢と共に自然になくなるものでもない。
そうやってぽっかり穴があるような気持ちは誰しもが抱えているんだ、1人じゃないんだ、って思わせてくれる映画。
パートナーがいても、いるからこその孤独を感じることだってある。

それにしても他の視点を入れると東京という街はとても奇妙で滑稽。
東京の濃度の高い部分のリアルを逃さず捉えたような映像。
たった20年で喫煙の文化がここまで変わっているのに、徐々に移り変わっているから気がついていない部分があってびっくり。
この頃の当たり前であったことは今の非常識になっていることもたくさんあるんだろうなあ。

よくわからないけれどなんだか好きな映画を撮る人、それがソフィアコッポラ監督だったのだけど、20年前のその感覚は変わらずに自分の言い表せない気持ちを映画にしてくれる人、に印象が変わっていたことが嬉しい。

何よりもスカーレットヨハンソンの美しさ、あどけなさ、可愛さ。
それだけでも観る価値があるよ本当に…。

ラストシーンについては賛否両論あり、どちらの意見も頷ける。
でもわざわざ「行き詰まっているの」と台詞を入れて説明してくれるところを見る限り、観客に寄り添って入れてくれたものなのかしら、と想像したり。

大人になって苦しいことが増えた分、この映画を楽しめるようになって、今まで頑張ってきた分が無駄じゃなかったと思わせてもらえました。
るみ

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