ラグナロクの足音

百年恋歌のラグナロクの足音のレビュー・感想・評価

百年恋歌(2005年製作の映画)
4.4
三世代に渡る神話的トリロジー。稀に見る酷い邦題だ。原題「最好的時光」から分かるのは、中国人にとって時間とは直線的なものではなく、光のように全方位に膨張するものということ。時とは光であり、また命(愛)でもあると。時代、言語、身なり、環境が違えど、根本的なものはなにひとつ変わらない。形態が移りかわるだけで、そもそも恋愛の営みは流動的なものであり、時の流れと心の近さは比例関係にある。故に身体的な遠さと心の近さは反比例する。そんなことを二項対立や暗転技法を用いて巧妙に表現されているように感じた。映像の暗転、つまりはどれだけ二人に夜が訪れたか、感情(慕情)を熟成させたかで二人の心の近さは決まってくるんだと。中国史で最も流動的だった三つの時代をチョイスしたのもそれが理由であろう。ノスタルジーと光なき現代へのアイロニーとしてもこの映画は未来永劫機能するはずである。
ラグナロクの足音

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