イチロヲ

性賊 セックス・ジャック いろはにほてとのイチロヲのレビュー・感想・評価

5.0
警察のガサ入れから逃げ惑っている学生運動家の男女グループ(小水一男・香取環など)が、ミステリアスで内向的な少年(秋山未知汚)を新メンバーとして引き入れる。70年安保を時代背景にして、テロリスト集団の生態を描いている、ピンク映画。

テロリスト側の目線から人間心理を説くという、若松監督らしさが漲っている作品。学生運動が吹き荒れている最中に、リアルタイムで製作された作品であることを念頭に置く必要あり。

徒党を組むことにより共感性を暴走させている「集合体」の男女グループに、就業先でプロレタリア運動を実体験してきた「個」となる少年が参入する。表面上では志が同じように見えるのだけど、心の奥底にもつ熱量がまるで違う。

「自分とは異なる思想を受け入れつつ、眼の奥底で静かに怒る人間こそが、本当に怒っている人間である」の法則。若者が政治への関わりに熱意を抱いていた時代のエネルギーが伝わってくる。ピンク映画の枠組みの中に潜ませて置くにはもったいない傑作。
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