ちろる

水の中のナイフのちろるのレビュー・感想・評価

水の中のナイフ(1962年製作の映画)
3.9
ロマン・ポランスキーの堂々たるデビュー作にして第36回アカデミー外国語映画賞を取った作品。
始まりのドライブシーン以外は殆どがヨットの上というワンシチュエーションということで、ポランスキーの映画作品の原点はもうここからしっかりと確立されていたのがわかる。

鮮明な映像に乗せて描かれる登場人物の構図はどのシーン切り取ってもポスターになるほど美しい。
そして、紅一点となるヨランダ・ウメッカのシーンごとに変化する美しさも圧巻。
はじめは当時流行ったであろうキャットアイグラスの姿、そして眼鏡を外してバレッタでまとめた妻らしいスタイル、そして髪を解いた色気のある開放的なスタイルと1人の女の様々気持ちの変化をその変化で繊細に表現しているのがすごい!

沖に出たヨットと男女とナイフ
これさえあれば、鑑賞者に言い知れぬ不安感ん与えるのに十分。
若者のおもちゃのような存在だった小さなナイフが、後半あっという間に主役となり、観る側はそのナイフの行き先を息を呑みながら見守る事になる。
この見せ方を知れば、ポランスキーの才能がもう開花されたことが分かる。
あぁ、やっぱ変態でもなんでもいい、すごい人なんだなと実感。

ちなみに意図はしていなかっただろうが、手も出さず、このことによって立場を徐々に優勢に進めたある意味怖い妻の姿を、同じ女として少し崇めたくなりました。
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