黒沢清監督本人も撮影中に悪ノリしてしまったというようなことを言っていたが、例えるならば、ゴダール、ベルトルッチ、アンゲロプロス、キアロスタミ、北野武、Jホラーをミックスさせ、それを哀川翔主演の大ヒットVシネマという枠組みの中でやってのけている凄まじく実験的な1作なのである。
勿論それまでにも鈴木清順の『東京流れ者』や、北野武の『ソナチネ』、最近めだとニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライヴ』等、作家性の強い監督が任侠映画の“型”を借りてハチャメチャやる映画は古今東西あるが、本作程あるゆるものがミクスチャーされごった煮された作品はないだろう(笑)
大杉漣と哀川翔のじゃれあいや追いかけっこ等、真面目なんだかギャグなんだかわからないようなオフビートなシーンもじわる。また、出てくる登場人物も、描かれる日常描写や暴力描写も、とにかく体温が感じられない。この虚無感と秒力描写はジョニー・トーも感化されたとか。あと近年の作品だと『A GHOST STORY』みも感じたので、もしかしたらデヴィッド・ロウリーも本作を観ているか?