UkyoKobayashi

ダーウィンの悪夢のUkyoKobayashiのレビュー・感想・評価

ダーウィンの悪夢(2004年製作の映画)
4.2
人によって評価は大きく分かれるであろうが、個人的には大好きなタイプの作品だった。授業内で生徒に観せる教材として購入し、視聴。
この映画に対して、「ナイルパーチのみを諸悪の根源かのように扱い、アフリカの孕む問題を単純化してしまった」という批判もあれば、「武器の密輸をクローズアップしたいのに肝心の武器が映らないじゃないか」といった批判もある。
これは監督自身の編集によりミスリードを引き起こしてしまった側面が非常に大きいだろう。
この映画を純粋なドキュメンタリー映画と捉えてはいけない。監督がタンザニアに滞在した4年間を、監督自身の視点でアーティスティックに表現&問題提起を行ったものとして観るのが一番自然だ。
これは特典の監督自身の解説にも表れている。
監督自身も「ナイルパーチのみが諸悪の根源だとは思わない。題材は何でも良いんだ。」「武器の映像もたくさん撮れた。しかし映画でそれを直接的に映すことに意味はあるんだろうか?ニュースでいくらでも見れるのに。それよりも武器を運ぶ人を映した方が問題が浮き彫りになるだろう。」と述べており、批判の大半は監督の意図が適切に伝わりきらなかった為であると強く感じさせられた。
ただ私はこの編集や撮影方法が悪いとは思わない。限りないリアリティを持ってしてアフリカの暗部に焦点を当て問題提起を行った本作は、資本主義に呑み込まれて真の貧困から目を逸らしている我々全員が見るべき作品だと思う。この作品内で解決方法を提示するのは意味がない。観客に解決方法を模索させ、動かさせる…そういう意味で真の「映画」だと思った。
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