すずき

ケープ・フィアーのすずきのレビュー・感想・評価

ケープ・フィアー(1991年製作の映画)
3.4
弁護士のサムは、妻と娘と3人で暮らしていた。
ところがある日、ムショ帰りの男マックスに「昔オレを有罪にしたろ」と、執拗に付け回される…

1962年「恐怖の岬」の、スコセッシ監督によるリメイク。
オリジナル版のグレゴリー・ペック、ロバート・ミッチャム、マーティン・バルサムも別の役で登場。

大筋は同じストーリーなんだけど、細部の違いによって、かなり印象が違う。
例えば、主人公。
オリジナル版では、逆恨みで粘着質なストーキングをされる、家族思いの正義の弁護士だった。その為、ホラー・サスペンス的な怖さは十分だったが、どうにもひたすら胸糞悪い印象だった。
しかし今回は、主人公は妻に隠れて不貞を働く浮気常習犯。
おまけに、過去のマックスの弁護にしても、弁護士としてのルールに反する行いをしている事が発覚する。
しかも、ヘタレな所を見せるシーンも数々。
こりゃまったく同情出来ませんわ、半分は自業自得だし。

んでマックスの方はというと、オリジナル版に比べて、インテリ度が大幅アップ!
逮捕前は文字も読めなかったそうだが、復讐のために刑務所で猛勉強&猛筋トレ!
出所後は聖書の一節を諳んじ、ぶら下がり腹筋をする文武両道の男。
さらに人心掌握術というか、モテ術にも長けている。
モテるのはオリジナル版もそうだったが、今作では、主人公の娘15歳も言葉巧みに惚れさせるという描写がある!15歳に言葉だけで惚れさせる4,50代中年オヤジって凄くね?

そんなヘタレ弁護士vs完璧超人性犯罪者、当然マックスの方に感情移入して見てしまうよね!
ラストの決着も、オリジナルよりスッキリしない締め方だけど、これは「悪」に感情移入する物語だからそれでいいのだ。

あと個人的に一番大きな違いが、主人公の娘のキャラクター。
オリジナル版はリメイク版より子供っぽく、頭の悪い行動に多少苛つかせられた。
リメイク版は、やっぱり頭は悪いが、機転の効く所も見せ、彼女の活躍も描かれる。
そして何より、いちいちエッッッッロい。
正直ルックスは、オリジナルより落ちて、顔アップになると「あっ(察し)…ふーん」みたいな感じで萎える。
しかし引きの画になると、露出度の高い衣装が艶っぽく、不思議な事に顔も可愛く見えるのだ。
先述の、マックスに心奪われる描写も、父親目線で「こんなオッサンがウチの娘となんて恐ろしい!許せん!」と思わせる意図もあるのかもしれないが、それにしてはエロく描きすぎだ。
だから益々、マックス側に感情移入して見てしまう。
そこまでを意図した演出ならば、スコセッシ監督こそ人心掌握のプロだろう。

オリジナルとリメイク、どちらもそれぞれ特色があって、一概にこちらの方が優れている、とは言えないかもしれない。
しかし、演出と展開はリメイクの方がテンポが良く、よってこちらの方がスコアは上です。