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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

3.1
世間的にはムトウユージからクレしん映画が失速した、というのが定説らしいが、水島努が監督するようになってからもうダメなんじゃないかな……
クラウス・キンスキー、荒野の7人(ユルブリンナーしか分からんかった)等の小ネタを挟むのは結構ですが、肝心のところが全然“西部劇”じゃない……西部劇のクリシェなんて腐るほどあるのに、それを有効活用しないのはちょっと意味がわからない。カスカベ防衛隊がスーパーパワーを発揮する小道具が赤いゴムパンツ……覚醒したら衣装こそちょっと変われど単に物理で強くなるだけ、その後空飛べるようになる、ってなんでそこのイメージの源泉は“スーパーマン”なんすか?
カスカベ騎兵隊とか、カスカベワイルドバンチとか、なんでもやりようあるでしょ。ラスボスはロボットだしこの題材を選んだ意味が……
機関車で走ってった先で、封印が解けて万事解決ってのもなんだかなぁ……
ああいうのは『レイダース/失われた聖柩』みたいにほんとにもうどうにもならないとこまで追い詰められてのデウスエクス・マキナならグッとくるけど、スーパーパワーで散々悪役いじめた後でしょ……
そもそも“西部劇”だったら、対決、からの去っていく男の後ろ姿で終わるってのがセオリーだし、”映画“という構造にメタ的に取り込む脚本なんだから、なおさらそこはベタにやんないとダメなんじゃないの。
クライマックスの延々チェイスアクションっていうのは『マッドマックス2』がやりたかったんだろうけど、じゃあアクションが良いかと言われれば……
例えば客車の屋根にいるガンマン3人をシンちゃんがカンチョーで倒すシーンがあるけど、3人とも全く同じ動きで倒す、という工夫のなさ……普通、2人目まで同じで3人目でちょっと外しが入るとかあると思うんだけど、人を楽しませる気がないのだろうか……

そりゃあ『カイロの紫のバラ』、『ラムの大通り』なオチを持ってこられたらオタクは泣くだろうけどさ……それでそこまでの90分が免罪されるわけではない。
あの女の子も西部の女じゃねえだろ、とは思うけど、シンちゃんの初恋の女の子としては正しい造形とは思う。エンドロールの全く背丈が合っていないで踊る2人は良かった。
シンちゃんの服の赤が、あっちの世界で色褪せた色調になるのは気が利いてると思う。
あとボーちゃんがインディアンっていう一発ネタだけは最高。あいつはバッファロービルでしょ。