Omizu

恋愛小説家のOmizuのレビュー・感想・評価

恋愛小説家(1997年製作の映画)
3.4
【第70回アカデミー賞 主演男優賞・主演女優賞受賞】
『愛と追憶の日々』で作品賞を受賞したジェームズ・L・ブルックス監督作品。アカデミー賞では作品賞他全6部門にノミネートされ、主演男優賞(ジャック・ニコルソン)と主演女優賞(ヘレン・ハント)を受賞した。

ヘレン・ハントはテレビ女優としてのイメージが強く、映画で存在感を示したことがあまりなかったが本作でブレイク、『セッションズ』で再び助演女優賞にノミネートされている。

また主演賞を男女同じ作品がとることは珍しく、90年代以降では『羊たちの沈黙』と本作しかない。

ジャック・ニコルソンは本当にイヤなヤツ。こんな役ばっかりだけど、本作でのメルビンは輪をかけてヒドい人物。過度な潔癖症、人種差別にゲイ差別、毒舌な嫌われ者。そんな彼がヘレン・ハント演じるキャロルと出会って変わろうとする。

そうしたメインの筋と、隣室に住むゲイの画家とのエピソードが絡み合っていく。差別していたゲイの画家サイモンには毒を吐きつつもある程度素直になれるときもあるが、キャロルにはどうもムリ。

正直メルビンのキャラが最後までどうしても嫌悪感しかなくて受け入れきれなかった。努力は認める。様々な危機(全部自分のせいだけど)を乗り越えて「よい人間になろう」というメルビンの姿勢はよかった。

ジャック・ニコルソンはいつも通り素晴らしい。しかしヘレン・ハントも負けていない。悩みを抱えつつも気丈に生きる強い女性を魅力的に演じていた。母との口論のシーンは素晴らしかった。終盤素直になれないメルビンとの対峙でも微妙な表情で手に取るように感情が分かる。素晴らしい演技だった。

メルビンがヒドすぎて一歩引いて見てしまい、あまり入り込めなかったのは事実だが、傷ついた人間たちのヒューマンドラマとしてとてもよい作品だと思う。
Omizu

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