ヤグ

少年のヤグのレビュー・感想・評価

少年(1969年製作の映画)
3.8
【この世の正義は全てフィクション】

社会が国家の統制下に置かれれば、
当然「正義」は国家によって規定されます。

ですが、その国家の正義を信じた結果、
「戦争」という悲しい結末を迎えました。

その事実があるから、戦後まもなく、
国家への不審から
「正義なき社会」が生まれました。

しかし社会について無知な小さな子供にとって、
国家への不信とは無縁の存在です。

『では少年はどこに正義を求めたのか?』

それは少年の父親と母親でしかないです。

生活が苦しいことを理由に
当たり屋を繰り返し相手を恫喝して、
生活費を稼ぐ父母の存在こそが正義なのです。

側から見るとただの犯罪一家です。
だけど決してこの親子だけが悪いのではない。

この秩序なき社会を作り出した国家自体が
犯罪の連鎖を作り出した張本人でもあるからです。

しかし所詮
『正義は国家にありけり』

誰も傷つけず、生活をするために自傷するだけの家族を
戦争によって何百万もの人を殺した国家が裁くという哀しい現実。

この裁きによって
少年が今まで信じていた正義はフィクションであったと認識させられる。

だが本当にそうだろうか?

私はこう考える。
この世界の正義そのものがフィクションではないのか?
ヤグ

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