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ヘンリーのeyeのネタバレレビュー・内容・結末

ヘンリー(1986年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

"ヘンリー" (1986)

最強・最恐・最凶の殺人鬼
ヘンリー・リー・ルーカス

或る殺人鬼の記録として物語は展開される

最終的には全米17州 300人以上を殺害

本人の不明瞭な言動もあり解明が困難で
「300人以上の殺害に関与したであろう」
と推測されている

映画はある意味ドキュメンタリー
そして
ある意味ノンフィクション

ヘンリーの背景となる生い立ちの環境が
その異常性を物語っている

両親から虐待を受け続け
父はアルコール中毒
母には男に生まれたことで虐げらる

兄からは右眼を失明させられ
8歳にして酒を飲まされ
10歳頃には獣姦強要・性的虐待

結果

13歳頃には空き巣・強盗
14歳頃には殺人・強姦

と壮絶な幼少期を歩んでいる

冒頭より殺害された死体や殺人シーンが
ところどころ挟み込まれる

観ていてとにかく静寂さがある
また内に秘めたる狂気も数々を感じさせる

一般的な人間が行なう行為

食事をする
トイレに行く
お風呂に入る

ヘンリーにとって
そういった日常の当たり前の行為自体が

"殺人行為"

に充当されている

当たり前のように殺害がこなされる

ヘンリーの相棒オーティスが物事に苛立って

"人を殺したい" と喋る

「じゃあ行こう」→『殺害』

これくらいあっさりしている

もはや淡々とし過ぎて理由がない

印象的なのはヘンリーが
相棒のオーティスの妹であるベッキーに
自身の母親殺しについて語るシーン

「何で殺害したか」

その話が二転三転して虚言癖を思わせる
それも当たり前の普通のように語る

痛みを感じる能力
他人への共感力
現実検討の喪失

といった欠如が諸々感じられる

昔は街中に監視カメラが付きまくっている
という状況ではなかったし

現代のようなメディアの普及もなかった

殺人鬼にしてみたら
活動しやすい世の中であったと考えられる

劇中ヘンリー自身は性的行動に対して
嫌悪感を抱くシーンはところどころある

一家殺害を2人で行なったときに
死姦しようとしたのを止めるシーン

相棒オーティスが自身の妹に手を出す
近親相姦にヘンリーは嫌悪が見られる

ヘンリーの実物は
バイセクシャルの人間であったようだが
劇中ゲイであるような描写はない

ラストも印象的

妹ベッキーに好意的な印象を持っていた
かのように振る舞うも結末は同じ

ヘンリー自身に慈悲や慈愛なんてものはない

"セブン"(1995) と同じ衝撃がある
同じ人間とは思えないほど大胆で冷徹

優しそうな印象からは
想像も出来ない残忍さが潜んでいる

母親を殺害した罪で刑務所に入っていた頃

出所直前

「出所したらまた人を殺すか?」

の問いに対して

「ええ。その足ですぐに殺します。」

この逸話が背筋をゾッとさせる

※劇中のユニークなエピソード※

妹ベッキーが地下鉄から出てきて
近くのイスで求人票をみるシーン

とある2人の男が階段のところで
口論を繰り広げている

この人物達はエキストラでもなんでもなく
実際の人物たちと監督が語っている

「撮影するからどいてくれ」

との問いかけに反応なく退かなかったから
そのまま撮影したというエピソードが痛快
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