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秋日和のkojikojiのレビュー・感想・評価

秋日和(1960年製作の映画)
3.5
1960年 監督:小津安二郎
●原節子(あきこ)、司葉子(あやこ)
●佐分利信(間宮)、中村信郎(田口)北竜二(平山)

 「秋日和」いい言葉だ。
 私たち日本人のDNAに直接訴えかけてくるような味わいを持つ言葉。
 小津安二郎が原節子、司葉子を迎えて、娘が嫁ぐ母親の複雑な心境を描くとなれば、もうそれだけで小津の世界だろう。

 この母娘の亡夫の友人三人(間宮、田口、平山)は、法要で母娘に会い、娘の嫁入りに一肌脱ごうと決める。しかし、娘あやこは母を気遣い結婚を躊躇(ためら)う。

 「晩春」、「秋刀魚の味」の逆バージョン。少し捻ったのが、三人の友人がそれなら母あきこも同時に結婚させようとするところ。
ここがこの映画の話の中心だ。

 小津が描くこの友人達。私が一番憧れる友人の形だ。全て同じ配役ではないが「秋刀魚の味」に登場する。いいなあーと思う。この三人の会話がとにかく面白いし、きめの細かい演出をしている。

 特に面白いのは、平山があやこと結ばれるかもしれない状況になった時の三人の演技。あやこは三人にとってマドンナ的存在だけに複雑なのだ。楽しめるシーンだ。

 現代っ子の象徴的娘を岡田茉莉子が好演している。

 娘を嫁がせた後、どうしょうもない寂しさの中、一人アパートに残る原節子。亡くなった夫を思い出しているのか。美しい!

#2022-331
死ぬまでに観たい映画ベスト1000-126
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