しろくま兄サキス

仮面ライダー THE FIRSTのしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

仮面ライダー THE FIRST(2005年製作の映画)
4.0
【はい、そうです。こんなライダーが見たかったんです】
冒頭、理由もわからず、後半なんの伏線にもならず抹殺される石橋蓮司、本田博太郎両氏にウホッ。

桜並木のトンネルを、主人公の乗るバイクが疾走する。シールドに写りこむ咲き乱れる桜と、それを見上げて微笑む本郷猛。実にライダー(←バイク乗り)ゴコロをくすぐる、いい”絵”じゃありませんか!仮面”ライダー”である理由が、あの数秒に込められている。説得力としてこれは十分(笑)。

ああ!ライダー(←仮面...ややこしい!)の造形カコイイ!基本に立ち返ったシンプルな意匠のなかにも、ハードさと生物的異形さをただよわせ、ゾクゾクするほどかっこいい。リデザインは出渕裕氏。ナルホド...つか、石ノ森章太郎先生が考え出した基本のデザインが秀逸だったからこそなのかもしれない。

ヒトあらざる力を手にして、制御しきれず苦悩する主人公の描写がいい。常々日本のヒーローモノに不満を抱いていた部分がこれで払拭。総じて香港映画ばりのアクションシーンはとてもよかった。技のひとつひとつにキレがありつつよどみない。まさに改造人間バトル、まさにライダーキック。加えて日本独特のタメやキメも実に小気味よく美しい。スネークちゃんの新体操チックな技とか、それを繰り出すとき不敵に唇をぺろりとやるのもマンガ的手法ではあるが、Mゴコロくすぐる。

プロット、撮影や絵作りに関しては、石ノ森イズムを正しく残そうとする製作者の心意気にたいそう感激したものの、脚本自体はやや凡庸に感じられた。ただ単に企画会議で練ったアイデアを、本にしただけのように思える。ここ数年一連のライダー映画のシナリオは、井上敏樹氏が一手に引き受けているようだが、たまに文芸を違う人材に任せてみるのもいいのではないかと。同じ東映なら細田守とか。

こんなことを言っても詮無いことと知りつつ、改造人間候補の選定基準とか、本郷、一文字の経済的バックボーンとか、何故タチバナレーシングのおやっさん(V3....笑)は本郷に新車のCBR1000Rサイクロンを託したのかなどなど、設定にいくつか説明不足と穴があるのが気になったので☆ひとつ減ということで。