三樹夫

悪魔のいけにえの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

悪魔のいけにえ(1974年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

私はホラー映画は好きなんだけどホラー映画にありがちなシーン、エンジンが中々かからない、電話を貸してもらおうとしつこくドアをドンドン叩いて、あげくに応答がなければ他人の家にズカズカ乗り込んで結局酷い目にあう等をメタ的なギャグとしてでなくいまさら真面目にやられるのが嫌いという鬱陶しい人間なのだが、この映画の他人の家にズカズカ乗り込んで結局酷い目にあうシーンは好き。男がしつこいぐらいドアをドンドン叩いてレザーフェイスに殴られるが、ひきこもりがうっさいんじゃーと暴れてるみたいで面白い。他にもレザーフェイスがチェーンソーで自分の足を切っちゃったりと笑ってしまうようなシーンが結構ある。
笑ってしまうようなシーンが結構あるが、レザーフェイスがチェーンソーを持って主人公を追いかけるシーンはトラウマレベルで怖い。個人的に映画での怖いシーンというのは何かに追いかけられるシーンなのでそれもあるが、この映画の追いかけられ方は、結構真剣に走って逃げてるのに追いつかれそうというのが良い。チェーンソー持った大男が走って追いかけてくる(威圧感たっぷりに大物感を出して歩いて近寄ってくるんじゃなくて)、これが良い。この走るところで、レザーフェイスは完全なモンスターではなくて人間というのが塩梅として見事。
レザーフェイスという存在に加え、この映画は悲鳴、チェーンソーのエンジン音、骨のカラカラいう音、送電機の音がBGMみたいになっており、それに加えざらついた画が独特の雰囲気とドキュメンタリー感を醸し出しており、怪しいビデオを暗い部屋で陰気な顔して観てるというようなアングラ感を高めてくれる。特に悲鳴は耳をつんざくほどで、眼のアップの多用も圧迫感があり印象に残る。実はこの映画、所謂スプラッターシーンというのがほぼ無くて、レザーフェイスがチェーンソーでちょっと脚切っちゃうシーンに少しあるぐらい。しかしながら、この映画はとにかく印象に残るモノが多いのが、この映画の存在感の強さに結びつく。グロってわけじゃなくとも脳裏に焼きつく。『脱出』より続く、田舎(というより南部)に行ったら頭狂った連中がいて、田舎に来るお前たちが悪いと言わんばかりに襲われるという映画の決定版だ。
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