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東京騎士隊(ナイツ)のnetfilmsのレビュー・感想・評価

東京騎士隊(ナイツ)(1961年製作の映画)
3.9
 三代目襲名披露の厳かな儀式。中心に所在なさげに陣取るハイティーン、まだ蒼さを残した松原孝次(和田浩治)が違和感を抱えながら聴衆の視線を浴びていた。土建業を営んでいた先代の父が急死し、アメリカの学校から急遽日本へ呼び戻され、あれよあれよという間に襲名披露をさせられる羽目になった若者は、専務の三島(金子信雄)の尽力もあり、その場を何とか取り繕う。その様子を一際おてんばな妹のは見つめている。だが孝次はそんなことよりも、新しく入学したミッション・スクールのサッカー試合の方に気をとられていた。文武両道でどんなスポーツも万能な孝次のポテンシャルに新歓コンパをする各部活は色めき立ち、様々な部活をたらい回しにされた挙句、最終的に彼が選んだのは運動部ではなく、音楽部だった。ブラックウッド先生は怪訝な様子で彼を見つめていたが、ピアノの前に座った途端、ティーンとは思えない天性のピアニストのテクニックが溢れ出した。彼はジャズ・メッセンジャーズのホレス・シルヴァーに師事していたのだ。一方その頃、3代目を襲名した孝次は、先代の時から働いているじいやの甚作(小沢昭一)から、ホテル建設工事をライバルの徳武組に横取りされてしまったことや、父の死に疑いがあることを聞いた。

 父の死に疑問を持った主人公は早速、独自の捜査を開始するが、そこには義母である松原理枝(南田洋子)との関係を狂わすある黒い疑惑が頭をもたげる。ここでも『くたばれ愚連隊』同様に、突如跡目争いに登場した和田浩治が権力争いの渦中へと突然放り込まれ、ハイティーンの正義感が歪でどす黒い大人たちの関係性を是正する。ダム工事の入札が開発省で行なわれ、落札は徳武組のものと決まりかけたのだが、孝次が不正があるとクレームを入れたことで入札は保留となった。徳武はただのお飾りだった三島をしめあげる。彼はこの入札にからんで松原組を裏切り、徳武組に入る手筈になっていたのだ。腐敗するばかりのこの街の象徴として徳武は陣取るが、彼の娘である百合子(清水まゆみ)は軽音楽部のギター担当の不動のエースとして、孝次に秘かに思いを寄せていた。まだスパイダース結成前夜だったテイチク時代のかまやつひろしが大活躍する今作は、中盤のワインレッド色のカーテンがたなびく様子をデヴィッド・リンチはその目で確認しただろうか?中盤の能の演目から矢継ぎ早に岩山へと変わり、母性をひたすら追い求めた主人公は絶対的な父性の倒れる瞬間をその場で目撃し、理性を取り戻す。学園青春モノと談合にまつわるサスペンスとが奇跡的に融合を遂げたいびつな野心作である。
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