ピュンピュン丸

TATSUMI マンガに革命を起こした男のピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

3.5
庶民の戦後史という側面と1人の漫画家の人生という側面とが絡み合い、独特の手法で力強く、そして現実を深くえぐるように描かれた秀作・異作。非常に興味深かった。表現手法や切り口は違うが、手塚治虫や藤子不二雄、赤塚不二夫、さいとうたかをなどの人生が描かれたものをよく目にすることが多かったので、本作でより理解が深まった。この世に四コマ漫画しかない時代に天才・手塚治虫がストーリー漫画の道を開き、そこに多くの後輩たちが続いた。そして漫画は既に子供たちだけのものではなくなり、そこに『劇画』が生まれる。その代表が、この映画の辰巳ヨシヒロ、そしてゴルゴ13の「さいとう・たかを」。ストーリー漫画から産まれた「劇画」ではあるが、やがて火のついた劇画ブームは天才・手塚をも忘れ去らせていく。苦悩の中からやがて手塚自身も進化を遂げ、あの名作『ブラック・ジャック』や『三つ目が通る』を生み出すことになるのだ。もうそこに今までのような勧善懲悪もののヒーローはいなかった。時代の流れ、それを感じる映画だ。