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キャスト・アウェイのSPNminacoのレビュー・感想・評価

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
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世界中に荷物を遅れずに配達することが使命だった男は、自分自身が迷子の届かない荷物になる。
さすが、無人島へ至るまでの展開が見事に周到だ。米国の田舎からロシアまで荷物視点でひとっ飛び、大勢が集うクリスマスまでの流れはコンベアに乗ったように止まらない。ポケベルが急き立てる時間、コピー機のリズムでダンス、「帰ったら結婚するんだ」フラグ。やがてそれは時間もスケジュールも意味がない無人島へと対比される。
まあ南の島でよかったよね…食べ物あるし、限られた物で何とかサヴァイバルする知恵もある。やっぱまず火を起こさないと!あと、靴もらうなら念のためベルトも取っておこうよ!断崖から見下ろした白波の幾何学模様がとても美しかったけど、もしかしてCGなのかな。
とはいえ、これはサヴァイバル映画じゃない。生きる葛藤や“ウィルソン”との友情など見せ場かもしれないが、意外と淡白で、ここでの4年間は特に寓話と感じた(「老人と海」っぽいし)。奇跡の生還も淡々としてる。筏に横たわるトム・ハンクスの背景に現れ、画面いっぱいに広がる巨大タンカーの船体ショットよ。
むしろ三部構成のうち面白く観たのは、前段と後段だ。たった一人異次元的な場所にいる間にも、壊れた懐中時計は時を刻み続け、あったはずの未来は改変されている。何せゼメキスなので、これもまた一種のタイムトラベル。行きて帰りし時間の旅。その旅人は最後まで「荷物」であることがブレない。
だから彼は予定届け先である彼女の家に行かなければならなかったし、悲しいかな、届けられたことでその旅は終わる。そしてまた冒頭の荷物へと円環する。「自分を救った」あの箱を開けてみせることはないが、それは『フォレスト・ガンプ』でのチョコレートの箱同様の意味を持つ。行き先を失った荷物である彼は、どこへでも行けるのだ。島から出られない絶望の水平線から、行き先を選べる希望の地平線へ。凝った撮影も面白いけど、アメリカ映画らしい物語の完成度が高かった。
それにしても、後半痩せたトム・ハンクスは息子コリン(現在)に尚更そっくりだったな。
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