ハンスウ

U2/魂の叫びのハンスウのレビュー・感想・評価

U2/魂の叫び(1988年製作の映画)
5.0
これはリアルタイムで劇場で観たんですよね。確か、たぶん、新宿武蔵野館だったと思うけど、この辺はうろ覚え。

80年代のアメリカのヒットチャートは今思うと、スターも、きらめく一発屋たちも、派手でにぎやかでみんな輝いていたと思います。私もいろんなとこに手を出すようにアルバムを買ったりテープに録音したりして、聴いては飽きて、聴いては飽きてを繰り返しながら音楽の趣味も少しずつ変わっていったと思う。ジョンメ・メレンキャンプもボン・ジョヴィもアルバムも買ったし来日公演も観に行ったけどいつの間にか離れてしまうんですよね。それはなんでなんでしょうね? あんなにお好きで聴いてたのに離れてしまう。自分でもわからない。だけど、10代の頃から変わらず、今でも聴き続けているのロックバンドが一つだけある。それが本作の主人公U2です。

この映画とは縁があるんですよ。ファンだからというわけでなく、映画館で観てそれで自分の中では一応終わったと思ったんですけど、その後、ある時パチンコでチョコっと勝ったことがあって、そのパチ屋に本作のVHSビデオソフトが景品で置いてあったんです。それでそれと交換して持ち帰り、その後何度も見返す作品になったというわけです。

この映画にちなんだアルバム「魂の叫び/RATTLE AND HUM」は世界的に大ブレイクした前作「The Joshua Tree」からさらにアメリカのポピュラーミュージックへのオマージュがあふれるアルバムとなっている。アイルランド出身でパンクロックから影響を受け、それまでソリッドなギターサウンド一辺倒だったところ、プロデューサーにもっといろんな音楽を聞け、と言われ、メンバーたちはアメリカのあらゆる音楽を吸収するように聴き込み、そして出来たのが「The Joshua Tree 」でありこの「RATTLE AND HUM」というわけです。

基本的に真面目なバンドなのか、本当に色々聞き込んだんだなというのがわかります。フォーク、カントリー、ブルース、ゴスペルと、なんでも入っているアルバム。参加ミュージシャンもボブ・ディランからBBキングと、アメリカそのもの。そんなアメリカを旅する映画でもあり、海を渡ったメンバーたちがアメリカの各所を訪れ、古いスタジオで録音したり教会で演奏したり、プレスリーの娘にも会ったりしています。

だけどやはりライブドキュメンタリーというのがこの映画の本筋だから迫力ライブ映像がメインです。曲ごとに厳選した会場での演奏を収録しています。40年前の名曲たちもこの頃はまだシンプルな古い照明に演出を頼っているだけだけど、観客との一体感は2010年代(2019年に来日公演してるんですよね)の現代でも続いていて同じように「NO MORE!」と叫ぶ。反骨も愛も全部観客に捧げる圧巻のライブ映像でした。きっと、ウクライナ救済コンサートでもこの頃と変わらずバンドも観客も同じ気持ちで「NO MORE!」と叫ぶことだろう。
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