プペ

マチルダのプペのレビュー・感想・評価

マチルダ(1996年製作の映画)
4.4
映画版を観てから原作に興味を抱いたクチだが、個人的に映画版をたいへん気に入っている。
その理由のひとつが、原作よりも″情緒性″があること。
特に原作では殆ど描かれていなかった″子供にとっての理解者であるべき大人に疎まれる主人公の悲しみ″が十分に描かれていたからだ。

原作では、「泣いたところで何も得られやしない」という達観ぶりで、どんなに虐げられていても終始、泣きも喚きもせずクールなスタンスを崩さないマチルダ。
その一方、映画版では図書館の帰り道、楽しそうに遊ぶ親子を羨ましそうに見つめ、本の中の登場人物ではなく本当の友達が欲しいと涙を流す。
どんなに天才であろうと、悲しいことに涙を流し、理不尽に憤る6歳の普通の少女なのである。

陽気なコメディの体裁を取りつつ、こうした切ない描写が一抹の陰を指し、物語に単なる絵空事ではない現実感と深みを与えている。


親と決別したラストの展開には賛否あるようだが、私は取り立てて問題とは思っていない。
何故ならマチルダの精神年齢はとっくに6歳のソレを通り越しているから。

見かけは子供でも中身は立派な大人。
彼女は自分の人生の主導権を守ろうとしただけなのだ。
両親と別れなければ自分の人生が駄目になると分かっていたから。
どんなに願っても乞うても、愛のない人間にそれを求めたところで与えてもらえやしないと、とうに理解した上での選択なのである。


本作を、単なる「児童向け映画」と侮るなかれ。
「児童向け映画」だからこそ成立するエンターテイメントを提供してくれた傑作だろう。
プペ

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