このレビューはネタバレを含みます
こんなに救いがない話だとは!Amazon primeのサムネは笑顔の写真だったので最終的に明るくなるのかなと思ったら、最後に向かって悲しさが加速してそのまま終わってしまいました…。
市場で自転車を探すシーンは自転車の数で圧倒されました。全然違うけど何故かヒッチコックの「鳥」を思い出しました。市場のシーンは人も物も多すぎたけど、あれはどこまでが用意したものなんだろう。
レストランのシーンで、周りの客のような食事を注文できるお金すら持っていない、自転車が見つからなければ仕事にありつけない、明日をまともに生きられるかどうかもわからない父を息子がどんな思いで見つめていたのかと思うと悲しくなります。生活が苦しくても、息子にとってはきっと大好きで尊敬できる父親だったのだろうとは思いますが、斜め後ろの裕福そうな客との格差で目の前の父が急に哀れで惨めで頼りない存在に感じられたのではないでしょうか。
貧困って本当にいいところがないですね。家族仲も悪くなるし子供も十分な教育を受けられず再び負の再生産のループに入ってしまうし….。あの息子には父の姿を反面教師としてどうにか大成して欲しいです。
あまりにも辛い話だったので「映画の中ではこの人は辛そうだけど、現実ではきっとイタリアの有名な俳優さんで、裕福な暮らしをしていたのだろう」と考えながら見て辛さを紛らわせていたのですが(??)、主役を演じたのは実際の失業者で、子役もそこらへんで見つけてきた子供らしくメタ的にも救いがなかったです。
バスに乗れなかった人たちが文句を言ったり、職を得ようとする人たちが自分に職を与えてくれるよう必死にアピールしたりする不満だらけの世の中なのに、教会ではみんなが静かに祈っているのが印象的でした。ごみごみしていて嫌なことばかりの俗世には希望がないから、あの世では心穏やかに過ごせるように祈るというのはどの国でも共通しているのかもしれません。
雨宿りしているときにブルーノの頭をサッとなでるお兄さん、いい人。