このレビューはネタバレを含みます
あまりに生々しいため、途中で少し具合が悪くなってしまったが、それほどリアルに訴えることに意味があるのだと思う。
戦後のある広島の中学の教室から始まる。
ラジオからながれるゼロの暁を聞きながら虚ろな表情を浮かべる生徒たち。そのなかで原爆症による白血病に苦しむ女生徒大場が倒れる。原爆から7年経ってもその症状が悪化しているのだという。そこからあの年の8月6日へと回想のシーンが始まる。
原爆の恐ろしさを世界の人たちに叫ぶ前にまず日本人にわかってもらいたいという思いを感じる。
本当に本当に一瞬ですべてが失われたのだと映像で再現することで思い知らされる。
鬼気迫った表情の加藤嘉と山田五十鈴。
「おかあちゃーん」と叫ぶ子供の声…大日本帝国バンザーイと叫ぶ気が狂ってしまった男。焼きただれた肌、着物姿で真っ直ぐに歩くともままならないまま、川にたどり着くことなく途中で倒れてしまう者も大勢いる。やっとの思いで川に入っていき先生と生徒たちで校歌や国歌を歌う。この地獄は原爆が投下された直後だけのものではない。船にすし詰めにされ送られた被爆者たち。島の避難先の学校や病院でも足の踏み場がないほど被爆者たちで埋め尽くされている。地獄絵図がずっと広がっていくのが、観ていてどうしても苦しい。
それでも少しでも希望の光がある。それは病院の庭で植えた大根の種である。放射能を浴びた土は何年も芽を出さないと言われていたそうだが、そんなことは嘘だとすぐにわかる。
悪いことをしていないのに傷跡をこそこそ隠して生きていかねばならない現実は、被爆者に限らずさまざまな傷を負った人々に言えることだろう。
川に入った人々、焼け野原で亡くなった人々…。立ち上がりこちらに向かってくる姿が二重露光で浮かび上がるラストは、今何事もなかったような顔をして見える広島という土地の歴史は未来永劫消え去るわけがなく、我々も決して忘れてはならないことなのだという、怒りがこもった強い思いが刻まれていた。