n0701

回転のn0701のネタバレレビュー・内容・結末

回転(1961年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

女は誰も信じてくれない自分だけが知っている事実(幽霊の存在)を暴き、二人の子どもをその呪縛から解き放とうとする。

だが、その事実を追えば追うほど、彼女はドツボにはまっていく。まるで尻尾を追い掛け回す犬のように、自らがその疑いの火をつけて回っているのである。

この怪談に結末はない。
存在しないはずの者を暴こうとして、自らに眠る本能を暴かれてしまう女性を描いているだけだ。

彼女はその屋敷に起こるあらゆる出来事を怪奇現象と捉え、不信感と不安感を抱いていく。

男の子と女の子は幽霊なんてつゆ知らず自由気まま、勝手気ままに生活する。おそらく子どもの怪奇的な行動を子どももおらず、結婚もしたことのない女は積極的な理解に努められず、整合性を取る手段として怪奇現象に収斂している節がある。

なお、子どもたちは別に幽霊が見えているわけではない。

騒いでいるのは、常に女だけである。
最後、少年は精神に異常を来たした女を前に突然死してしまう。そして男の子にするとは思えない熱く、猛烈なキスをして物語は終わる。

重要なことは、その少し前。
男の子が恐怖に駆られ逃げたとき、躓いて転んでしまった少年を女が抱きかかえ、何の前触れもなく急に「男が消えた」と呟き始める。

ここからも分かるとおり、物語内で登場する男の亡霊は、女の中にだけに内在する者なのだ。

つまり、幽霊なんてはじめからいない。
いろんな偶然が重なり、それらしく聞こえるかもしれないが、そんなもの存在せず、女のヒステリーなのである。

かつて、キリスト教原理主義者を筆頭とする禁欲主義者たちの中に、抑圧された欲求不満がヒステリーとして暴走するとよく言われたものである。

まさに防衛機制である。

おそらく、これは心理学的な実験だ。
子どもの不可解な行動、言動、人の死、噂、事実と自分の中に眠る抑圧された感情とが一体となり、まるで麻薬患者のように妄想と現実の区別がつかなくなった憐れな女性を描いているものだろう。

故に物語も結末もあったものではない。
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