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ファンタスティック Mr.FOXのLzのレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
4.7
大好きな作品。
かなり昔に観てずっと下書きに入れたまま止まってた。

オープニングからハマりにハマる動物たちの動作と表情。ストップモーションアニメはとても好きで多種多様なアニメーションを目にしたけど、本作のモーションは中々見かけない斬新なものだった。
スピード感だったり、絶妙なぎこちなさだったり、柔らかいスムーズさの中にある大袈裟な動きが何とも魅力的だった。リアルな動作をしたかと思えば、コメディ調にてんてこ舞いを繰り広げて、その絶妙なバランスにとても惹かれた。

87分という映画としては短く、ストップモーションアニメとしては長いということもあり、テンポの良さが重視される。そのテンポが絶妙過ぎる!お話自体はユニークさと若干のカオスが漂う内容で、その不思議な空間がテンポの良さを生み出していたように思う。愉快だけどブラックジョークも混ざりつつ、最後まで飽きずに楽しめた。
人間に見立てた姿で、動物だからこその葛藤や困難が、人間相手に生じるこのユニークさ。野生の感覚を感じる自然な狡猾さや、地理を知り尽くした策略も面白い。人間みたいだけれど、それよりかは少し粗暴なのも良い。この絶妙なバランスのキャラクターだからこそ、この話が映える。

キャラの個性が際立っていて、ひとつひとつ確立しているのが素敵。みんなの掛け合いも見所の一つで、相手によって変わる喜怒哀楽の表現が多種多様でとても面白い。

そして最も特徴的だったのが、感情の描写をする際、動物たちの目、瞳にクローズアップしていたこと。
まずキツネだけでもみな瞳の色に差異があって、その透き通る美しさの中にも眼光の鋭さや滲む柔らかさが表現されていた。人間の目に似ても似つかぬその瞳の奥には、真っ直ぐと獲物を見据える野性が潜んでいたように見えた。
特にアッシュの反抗心を感じる野生的な目つきと、それに反してポロポロと涙を流すあどけない目と、コロコロ変わるその表現にとても惹きつけられた。アッシュが膝を抱えて涙を流して、それをMr.FOXが慰めるシーンがあまりにも愛おしくて大好き。

全編における色合いやデザインも夢中にさせられる魅力がある。とても輝いて見えて、この世界に住んでみたい、人間の世界より楽しそうだと思わせられる。物語では、人間がその世界を壊そうとするけれど。

ブラックジョークや皮肉、えぐめの表現も多くて、子どもも大人も別視点から楽しめて観られるのが良い。
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