雪吹雪

容疑者Xの献身の雪吹雪のネタバレレビュー・内容・結末

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

有名だしテレビでも放映したはずなのに観てなかったシリーズその1。
ミステリとしてもヒューマンドラマとしても個人的にすごく満足した傑作でした。何で観てなかったんだ…。
テレビシリーズのガリレオはエンタメに特化した派手目で大袈裟な演出が売りな作風だったけど、今作はそういった演出は徹底カット(掌を顔に被せるポーズとか)。一見地味でも、湯川と同等の頭脳を持ち、唯一意見を交わすことができる石神というキャラクターのおかげで、アイコンが無くともドラマ版よりも強く湯川の魅力が描かれていた気がする。

タイトルにある「献身」ですが、意味は見返りを求めない無償の愛情、自己犠牲等と訳される。
石神は誰にも理解されなくていい感情を献身という形で花岡親子に向ける。本作の良かった点として、その理由や目的が明確に提示されない事。命を投げようとするほどの絶望も、そこから救われた些細な優しさも、その為に重罪を犯してまで罪を被ろうとしたその献身が、はっきりと明示されずとも、それらを暴く湯川の苦悩と合わさってとても具合の良いドラマに組み上がっていた。

物語の最後、石神の見せた慟哭は、失望や無念から出たものではなく、ただ幸せになってほしかった悲しみなのか、献身が歪にも報われた事の安堵と後悔からなのか…ハッキリと解らない。そこがいい。ここまでキャラクター毎の感情や意思を考察したくなる作品久しぶりでした。
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