ムビ太郎

容疑者Xの献身のムビ太郎のレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
4.6
すべての現象には理由がある。
だがその理由は、合理的なものとは限らない。

数学上、Xとは特定の値がまだ分からない状況や、値が変動する可能性がある状況で使用される
(引用 https://www.weblio.jp weblio辞典より)

献身とは... 1 他人やある物事のために、わが身を犠牲にして尽くすこと。「国家の発展に献身する」 2 キリスト教で、神のために、生涯をささげること。
(引用 https://kotobank.jp コトバンクより)

全て見終わった時の、このタイトルの美しさに感激した。Xという変数を使う事、そして「献身」という言葉。素晴らしいと感じた。
そして冒頭の「愛は計算できない」という湯川のセリフが、映画全体に効いてくるのも良いポイント。

四色問題の話も愛の延長線上で最後の最後で「どうして?」のセリフで拾われた。湯川にとって石神の殺人という非合理的な行動は理解が出来なかった。「どうして?」
靖子にとっての石神の全ての身代わりも、なぜそこまで尽くしてくれるのか、理解ができない。「どうして?」
そして拘置所に護送される直前の靖子の罪の自白。愛する靖子の幸せな生活のために、まさに献身的な行動を取り続けた石神にとって、この行動は想定外のものだった。「どうして?」
ここに存在する共通項は「愛」なのでしょう。
「愛」という不確実で見えないものが、確実に存在するからこそ、この物語では隣り合う人々が理解し合うことはない。というより、わかっていても「理解したくない」という葛藤を生み出しているのかもしれない。

「献身」という言葉については、冒頭記述した意味の両方が作中見えたのが石神。2の意味が作中見えたのが靖子。きっとこの後靖子がお勤めを果たしていく事で、1の意味での献身を実現していくんだろうね。2が内面の部分で、後発的に1の意味で、実際の行動に移していく。これがキリスト教的な献身なのかもしれない。実際めちゃくちゃキリスト教の演出あったしね。

サスペンスだけれどここまで泣けるのは初めて。他のガリレオムービーシリーズも観たいと思った。
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