TAK44マグナム

ティックスのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ティックス(1993年製作の映画)
3.7
ステロイドでドーピングしたのは・・・
ダニでした!


ジェシカ・アルバも出ていた「アイドルハンズ」で愉快なゾンビ役だったセス・グリーンが主演を務めた生物パニック映画。
セス・グリーンは、幼少期からのトラウマに悩む高校生の役で、彼を含む問題児たちが引率者に連れられて自然あふれる山小屋へ行ったら、そこでマリファナ栽培に使われていたステロイドが原因でやたらとマッチョになったマダニの群れに襲われちゃってどうしよう?といったお話であります。

メッチャ小さなダニが巨大化するわけで、大きいといっても20センチぐらいなのですが、そんなのでも何十匹、何百匹もカサコソと襲いかかってくるのは虫が苦手な方だと卒倒しかねませんね。
しかも、クライマックスでは人間の身体を引き裂いて超巨大化したボスマダニが登場(ダニのくせしてキィーキィーと鳴く)、まるで「空の大怪獣ラドン」のメガヌロンや「ゴジラ84年度版」のショッキラスのようにかぶりついてくるのですからたまりません。
ホラーとして観た場合、この人間引き裂きシーンが一番の見所といえるでしょう。

ダニは病原菌を運んで、時には噛まれると大変なことになる要注意な虫。
あと、「街のダニ」とかって人を邪険にするときに使われるぐらい嫌われていますし、「このゴキブリ野郎!」みたいに使われるゴキブリと同等に世間一般的な認知がされている可哀想な虫でもあります。
そして、それも致し方がないほどキモい虫だという事が、でっかくなったことで余計に納得できるのが本作(苦笑)


さてさて中身はと言うと、まるでディズニー製の作品みたいに(2名を除いて)悪いヤツに限って犠牲となる健全仕様。
そんなわけで、導入設定は「インブレッド」みたいでありますが、別に狂人集団になぶられるわけでもないし、殺人鬼に襲われる田舎の山小屋ホラーということでもありません。
巨大ダニがボディカウントをただ増やしてゆくような映画ではないので、残酷さがウリのサメやワニの映画とは少し違った印象ですね。

粘膜をダラリと垂らしたタマゴや血を吸うために張りついてくるマダニのプロップは完成度高し。
半透明のタマゴの中でマダニの足が蠢いているのが見えて、気持ち悪くてタマランです。


ラストはかなり御都合主義で、スピーディではあるものの少々呆気ない幕切れ。
出来ればもう一段、更なる盛り上がりが欲しかったですね。
主人公のトラウマや他のメンバーが抱える問題が物語にまったく絡んでこないのも難点。
主人公は主人公らしく活躍はしますが、トラウマを克服するような成長が見られるわけでもなければ、ヒロイン?との関係も別になんてことないまま映画は終わってしまいます。
また、普通なら死にそうなキャラクターがピンピンしていて、作劇上、主人公と一番絡んでいた黒人少年が途中から別行動になってしまうのは、(シナリオは作者の勝手ではありますが)意外性とは別にキャラクターの使い方が勿体ないし、やけに黒人少年だけ悲惨なのは何か勘ぐりたくなってしまうのでよして欲しいです(汗)

総じて良作ではあるものの、監督が悪名高き実写版「北斗の拳」など、そのフィルモグラフィーが壊滅的なトニー・ランデルだからか、折角のキャラクター設定が殆ど意味をなしておらず、それに伴ってドラマが薄味すぎます。
もっとも、これはシナリオ上、仕方ないのかもしれません。
やはり、こういった映画の場合は集団の中の個人にスポットが当たるのが死ぬ時なんですよね。
それがないから集団に埋没してしまいがちで、例えばエイミー・ドレンツは「イケてるビッチ風女子」という、よくあるキャラクターでしかないのに個別に襲われる場面があるので後半になって目立つわけです。
と言うか、サングラス外したら可愛いじゃないですか、エイミー・ドレンツ。
森林なのにビキニ姿にもなってくれるし、けっこう好みでした(苦笑)!


以前から観たくて、ようやく某動画サイトにあがっていることを知り、鑑賞できた次第。
山小屋がダニの集団に襲われるというチープなお話でありますが、「スクワーム」や「スラッグス」、「アラクノフォビア」や「ザ・ネスト」等と肩を並べる、気持ち悪い虫が襲ってきて嫌〜ん!な映画の代表格と言えるでしょう。
兎にも角にも、普通に面白いのでオススメです。


某動画サイトにて