<概説>
王国から追放された子ライオンは、いつしか立派な大人ライオンに。成長した彼は狡猾な暗君とハイエナ共から祖国を救うことができるのか。ディズニーによる王道アニマルファンタジー。
<感想>
これほど幸福な世界のダークサイドを観察できる作品もないのではないでしょうか。よくよく考えると、ではありますが。
物語の視点は基本的にライオン側から進みます。
そこに登場するのはほとんどメインのライオン達で、その側近たる鳥や猪は同種と群をなしている様子はありません。
そして側近であろうと非ライオンである彼等は被捕食者としての立場のままであり、ライオンと対等の立場にないのです。
このパワーバランスについてはティモンとプンバァが初登場するシーンによく表れていますね。
そしてライオンの王国にハイエナ(≒余所者)が介入してくるとライオンの王国は存亡の危機に。物語は不自然なまでの急転直下で絶対絶命の状況となり、ハイエナ=悪の図式が成り立ちます。
ここから先述のパワーバランスも加味すると、いわばライオン至上主義的ーーあるいは選民思想的価値観が物語の根底を成しているように思えてなりません。
そんな風に見てしまうとライオンが常に崖の上にいるというのまで暗示的に見える。違和感が細部にまで向いてしまうのも、そしてそれが問題とされないのも、なんだかなあ。
最後の有象無象の動物までやってきたハッピーエンド。
あれもどうもエリートにおもねる賎民の図式に見えてしまいました。汚れた心で見てしまう自分が悲しい。