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グリニッチ・ビレッジの青春のmasatのレビュー・感想・評価

3.3
この青春は彼が見た風景。
これこそ、青春映画。
今や忘れ去られつつある『青春群像』(53)を思い出す。
猫と老人のロードムービーにより、アメリカン・ニューシネマへ、新たな地平を切り拓いた監督マザースキーによる“マザースキー's青春群像”だ。

やはり青春には、特有の悲喜交々の中に、その輝きの中に、薄っすらと死の足音を感じるものだ。その強弱の表現、その巧みさで、青春映画の傑作度は変わる。

そして、ニューヨークを濡らす“雨”のタイミングも素晴らしい。このタイミングの巧さも、傑作度を決定付ける。(同じニューヨーク派の監督、チビハゲメガネユダも、この雨の表現とタイミングが実に巧い!)

成長と同時の旅立ちの瞬間も、監督の腕による。主人公は、自分が歩き、見つめたあのユダヤ人街を後にする。そのカメラが的確に観る者の感情を煽ってくる。

流石マザースキー、俳優は皆、好演であるが、特に、暗い瞳が印象的な(『ディア・ハンター』前夜の暗さ最高潮の)クリストファー・ウォーケン、その“陰”を、打ち消す様に登場する母役シェリー・ウィンタースの“陽”が、交互に登場し、打ち消し合いながら主人公を取り巻く様が、実に可笑しい。
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