改名した三島こねこ

アイデンティティーの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

アイデンティティー(2003年製作の映画)
4.1
<概説>

豪雨の中様々な男女11人が安宿に集まった。浸水した道路のせいで閉鎖空間と化したモーテルの中で、一人、また一人と惨殺されていく。4年前の連続殺人事件の真犯人は誰なのか。

<感想>

作中でも言及されているように、本作の展開の基盤にはA・クリスティの『And Then There Were None』が間違いなくあります。クローズドサークルの中で殺人により容疑者に消去法をかけていくという、卓越した脚本を要求される理想的なミステリ展開。そしてそこにきちんとこの作品ならではの個性もあり、非凡な作品であることをまざまざと見せつけられました。

作中の主要なところを占めるとある要素は、ノックスの十戒で禁止されているほどには認めがたい要素です。ただ本作に関しては冒頭からきちんと伏線となる要素を張り巡らせていたので、意外にも素直に納得できました。というより本作は作品の内外のどれもが伏線のようで、どうなってもある程度納得ができるつくりになっていますね。

それなりにミステリを読んできたつもりなのですが、最後の最後で膝を叩くことになりました。物語の大筋や結末の要点については中盤で読めていたのですが、それにおける伏線が「まさか!」と驚愕。

…と感想を書いている時に脳内で整理していたのですが、ここでまた衝撃。最後のあの再審理におけるとある一言。間違ってないけれど、間違っていたんですね前提から!そしてそれに真犯人以外誰も気がついていない!なぜなら彼ととある人物以外関与していないから!

サスペンス作品としての浪漫だけでなく、とにかく巧妙な脚本の作品でした。魅力的なキャラクターばかりでなくとも傑作は描けるというのを思い知りました。これには拍手しかないです。