荒野の狼

グリーンマイルの荒野の狼のレビュー・感想・評価

グリーンマイル(1999年製作の映画)
5.0
1997年のアメリカ映画で189分の大作だが飽きさせない。テレビシリーズ「大草原の小さな家」のファンには、同作でオルデン牧師を演じたダブス・グリアが主人公としてルイジアナの老人ホームで回想をはじめるところから映画はスタートするので嬉しいところ。2007年に逝去したグリアの最後の映画作品となる。
本作は、キリストと同じように病気を治せる奇跡を行うことのできる黒人の死刑囚ジョン・コーフィと、その看守を取り巻く1935年が舞台の映画。ユニークな登場人物と死刑囚という人の生死にかかわる問題を扱っているため緊張感は時に高くなり、人種差別、死刑制度の是非(先進国ではアメリカと日本にのみ死刑制度が残存)などについてメッセージ性も重要(人種差別と死刑制度は現在も解決されていない問題)。暗くなりがちな題材にも関わらず、トムハンクスを中心とする看守たちの演技は全体に明るく、途中から登場するネズミとの交流はこころ温まるものがある。
原作の小説では1932年の設定だが、映画の中で1935年の映画「トップハット」の上映シーンを挿入する必要から変更された。作品を映画的にまず引き付けるのはコーフィの巨体と奇跡なのだが、映画が進行していくうちに、これらの部分はむしろ付加的なものとなる。作品が終わった時点での感想は、コーフィの体型は強調する必要はなく、奇跡の描き方も大袈裟過ぎないほうがよかったのではとすら思えた。
すなわち、映画では、コーフィは長身の看守ブルータルより更に頭ひとつ以上大きいので、身長は230㎝以上に見えるが、実際の設定は203㎝である。両者を演じる俳優の身長差は、ブルータル役のデヴィッド・モースが193㎝で(ブルータルはルイジアナ州立大学のフットボール選手だったという設定なので高身長でよい)、コーフィ役のマイケル・クラーク・ダンカンが196㎝であるので3㎝である。作品の内容を考えると、コーフィを並外れた高身長にする意味はなく、彼が黒人であるための差別という視点がむしろぼけてしまうのでマイナスである。また、コーフィの人間としての素晴らしさは奇跡を行うことではなく、他人の苦しみを自分の苦しみとして感じ、苦しむ人を救いたいとう優しいハートである。病人を治すという特殊能力を強調すると、コーフィはイエス・キリストのような超人になってしまい、我々と同じひとりの人間として彼の苦境に共感するのを妨げることにもなりかねない。
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