このレビューはネタバレを含みます
ある囚人と看守の話。
一見恐ろしさを覚える大男は暗闇が怖く、日々人の憎しみや痛みが刺さりながら生きていく。奇跡のような信心深さと、文字通り奇跡を起こす男。
彼はさまざまな命を救う。
ある家族の幼い娘を殺した男と、人を権力で虐げようとする男に彼は罰を下し、幼い娘を殺された憎しみを、本来向けられるはずだった男の代わりに憎しみをジョン自らが受けこの世を去っていく。自分が救おうとした娘たちの家族の憎しみを。
彼がいつも涙を浮かべている理由が最後にわかる。決して卑屈なものではない、と私は思う。
ジョンの殺人疑惑は信じず、彼に寄り添ったポールの命により彼は世を去った。
活動写真をキラキラした目でみる彼の姿と、その姿を見守る看守たちにグッときた。
世の中の仕組みの中で、人間の抱く偏見の中で、真実や愛情深さなどが介入できない無慈悲さ。
ジョンとポールのことしか書いていないけど、他の登場人物たちも人間味あふれる豊かな人たちだった。