このレビューはネタバレを含みます
佐藤純彌がやくざ組織と港湾労働者との闘いを通して描く、反やくざ反高度経済成長の赤色アクション映画。主人公鶴田浩二は武闘派一筋で銭勘定に疎く組経営に失敗し本家からはじかれ、心を変えて労働者たちに同情を寄せてみても、それまでさんざん生き血を吸ってきたため罵倒拒絶されるしかない。居場所を失い無価値となった鶴田はついに労働者が見守る前で自己断罪の割腹自殺を遂げる。
鶴田の行動万事に頭の切れる兄弟分丹波哲郎へのつまらぬ対抗心が流れていて、この映画の鶴田の扱いは辛辣極まる。資本家・暴力団と繋がる警察の警告も聞かず、未組織労働者たちは鶴田の屍を置いたまま行進を始め、次なる暴動のイメージを紡ぎ出して映画は終わる。まるでイタリアの社会派映画のようなラストだ。