父母ともに癌

脅迫(おどし)の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

脅迫(おどし)(1966年製作の映画)
4.0
サラリーマンの家庭に逃亡犯が乱入。彼らの犯罪の片棒を担がされるサラリーマンの話。

面白かった。
身代金受け渡しものだったと思う。
デパートの屋上での受け渡し失敗が白眉で、主人公の作戦を観ている側に悟られずに展開させる脚本の丁寧さと印象的なカット割、音楽の的確さ、そして三国連太郎の演技の素晴らしさ。すべてが緊張感を娯楽に昇華させている。
ここから三国連太郎がいつものように追いつめられている気持ちになってノソノソ歩き回ったりするんだけど、こういうことをさせるとこの人の表情だったり身体だったりは輝く。説得力を醸し出してくる。
そしてこの映画の三国連太郎は彷徨の末に肝を据える。
この肝を据え、その後の演技。決して派手にそういう演技をするわけではないのだけれど、その目の座り方だけで気持ちの変化を表現していて見事だった。
三国連太郎の気持ちの動かし方とその伝え方は決して粋でも派手でもないんだけれど、心にぐんとのしかかってくるものがある。
そこから逆算してみると最初の結婚式での演技もまた素晴らしい。
三国連太郎の魅力がよくわかる作品だったと思う。

西村晃と室田日出男という僕にとって非常に嬉しいコンビが悪役をやっていた。たまらない。
西村晃の最後なんてやっぱり素晴らしい。
田中邦衛がちょっとだけ出て癖を発散して退場したのには笑った。昔からそんなんなんやね。

オープニングが妙にスタイリッシュだったり、デパートから逃亡する際の望遠のカット、三国主観のグラグラカットなど印象的な映像が多くあってそれが非常に効果的だったように思う。

面白い映画。短いし。いい。
妻が他の男に乱暴されたかもしれない時に夫が妻を殴るという感情のラインが有りな時代の映画。
父母ともに癌

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