シン・ゴジラ、シン・エヴァと最高最高年間ベスト作品が続いて、はっきりとその系譜上にあるこの作品。もちろん期待大で見に行ったわけだが、一つ心配があるとすれば監督・樋口真嗣だった。
そしてその心配は当たっていたんじゃないだろうか。
全体的に演出が軽い感じで鋭さがなく、画角もシン・ゴジラの模倣ではあるのだろうけれど、その気持ちよさあまり出ていない。おそらく編集のテンポの問題なんだろうと思う。
庵野氏のフェチズム、偏執性みたいなものの模倣品って感じなんだろうか。見ていて軽くて、もったりしていて、どうもテンポが悪い。
ギャグもキレていない感じ。わざと軽いことばを入れる、バラエティっぽい演出がなされているところもあったが、どうにも噛み合っていない。
あと、なんといったらいいのか、長澤まさみを使った痴漢・視姦的ジョークとでもいうんだろうか、あれもちょっと意志に反してアップデートされてしまった僕には辛かった。
昔の映画や創作物でなら受け入れられるんだから器用なものである。今つくられると、引いてしまう。勝手なものだ。
総じて滑り気味の映画になってしまっていて、シン・ゴジラ、シン・エヴァに感じた身体的快感は得られなかった。
話の内容はかなり面白かったと思う。
いろんなパターンの圧倒的な侵略者とそれにどうすることもできない人類。守ってくれるウルトラマン。人間の存在がすごくか弱い世界が描かれているのが気持ちよかった。これは、今人間同士で争いまくっているためだろう。そんなものは関係なく、生かされたり滅ぼされたりする世界が現出している中盤から終盤の諦めと緊張感が両立した世界観がよかった。
でも国際会議のシーンのギャグがはまらなくて、そこから急激に緊張感がなくなってしまって残念だった。
役者の人たちは本当にみんな素晴らしくて。
長澤まさみは変な役をさせられてたのに良かったのですごい。
田中哲司はもう、あんな役ばっかりだが、手慣れたもので良かった。
嶋田久作総理はじめ内閣の面々の顔が非常に良い。益岡徹とか、セリフなかった気がするけど。いてくれると内閣感すごくでる。
山本耕史。キャスティングが完璧だった気がする。年齢を重ねたのにあの感じのままの山本耕史の不穏感は、メフィラスを演じるのにぴったりだったのだ。
決して面白くなくはなかったんだけど、取り立てて面白い訳でもなく、不快な場面がないわけでもない。
特別に面白いことを期待してしまっていて、すこしがっかりはしてしまった。
でも、シン・仮面ライダーを映画館に観に行かないってことはないくらいに面白かった。
