父母ともに癌

コンフィデンスマンJP プリンセス編の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

2.7
大河ドラマへの高まりがあり古沢良太と向き合っている。
ドラマ版コンフィデンスマンは結構面白かったし、リーガルハイも良かった。しかし映画はピンとこない印象。

この映画は長澤まさみ率いる詐欺師チームが、大富豪一族の相続権を手にした行方不明の末娘【プリンセス】をでっち上げて金を詐取しようとする話。

この偽のプリンセスが意外とプリンセス適正があり…
というような展開になっていくのだが、終盤、貧しい怒りに震えたテロリストをプリンセス感で退治るシーンがあるんだけれど、そこの台詞のどうでもよさったらなかった。本当にどうでもいい、いいこと風なことを言っている。しかしながら、その場面が映画の中で一番の強度、地位を占めるモラルであったのだ。

これが良くなかった。
古沢良太の魅力は、伏線回収にモラルが負ける所だと思っている。
モラルがなかったことにして、伏線を回収したり、お客を驚かせたりすることがドラマでは多かったように思う。
実は善意のひとではなかった、とか、実はそんなにショックを受けていなかった。とか。
そういうところこそを僕は好きだったのだが、映画でそれが失われている。伏線や驚きのために犠牲になってきたモラルが復活している。

それでは普通の邦画ではないか、と思う。そしてお話にモラルの筋が生まれると、伏線にならないけど伏線っぽい怪しい回収されないシーンが多発することになって、伏線の妙味も減ってしまう。結果ドラマよりも密度の非常に薄い、古沢良太脚本らしくないと思えるような映画になっているように思う。

あと、柴田恭兵のキャラクター、絶対盗聴すると思うんよな。盗聴はしない、みたいなシークエンスは欲しかった。
監視カメラはあるんだから、盗聴をしない理由もないだろう。
そういうギャグのために生まれた無理、みたいなのも目立った印象。

役者はどうなんだろう。デヴィ夫人が2割増しくらいデヴィだったのは笑った。
三浦春馬がとても良かったんじゃないだろうか。演技が上手いひとのコメディ演技って感じ。このまま古沢良太脚本に出続ければ素晴らしい演技派俳優になったんじゃないだろうか。まだ若さとかっこよさ勝っているんだけれど、老いて演技力をこそ問われる立場になった時の三浦春馬を見たかった、きっと素晴らしいだろう。と思わせる演技だった。
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