Inagaquilala

GSワンダーランドのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

GSワンダーランド(2008年製作の映画)
4.0
思えばGS(グループサウンズ)のブームは、1967年の夏から始まり、69年の春には終息に向かいつつあった。わずか2年足らずのブームであったにもかかわらず、数々の影響を後世に残しているとも言える。

この作品もその影響下でつくられたものといってもよいかもしれない。とにかく時代考証が驚くほどきちんとなされている。ブームに遅れてきたGS、ザ・タイツメンをめぐって繰り広げられる人間模様が、実にテンポよく描かれている。

レコード会社の思惑のもと、急遽、集められたメンバー。しかし、用意されていたデビュー曲には、オルガン奏者が必要であり、急場をしのぐため女性のミクをメンバーに入れる。当時のGSは、ほとんどが男性ばかりのグループ、ミクは女性という事実を隠してバンドに加わる。

物語はこのミクを中心にまわっていくが、GSブームの消長とうまく重ね合わせながら、バンドをめぐる人間ドラマを描いていく。当時の雰囲気を忠実に再現した時代考証も流石だが、それよりも監督のただ者ではないカメラワークと音楽に対する鋭敏な感性に驚かされた。

メンバーが重要なミーティングを重ねるときにカメラがその周りを1周したり、当時の芸能ニュース映画を巧みに再現したバンドの紹介などはもちろん、安易に当時の曲を使用せず、GS風のオリジナル曲をバンドに歌わせていることに感心した。しかもメインの主題 歌を橋本淳+筒美京平の当時の黄金コンビに新たにつくらせているのもびっくりだ。

年齢的にずっと若いはずなのに、監督の細部へのこだわりには脱帽だ。ここまでGSスピリットをぶち込んだ映画は、ブームの最中につくられたどんな映画より、当時の空気を再現していると言える。

Netflixのリコメンドで教えられた作品だったが、見逃していたのが悔やまれる、かなりの良作と言える。監督の本田隆一が、その後、あまり劇場映画を手がけていないのが、気になるが、とても高い技量を持った監督だと 判断した。
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