エクストリームマン

M★A★S★H マッシュのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

M★A★S★H マッシュ(1970年製作の映画)
4.2
『トロピック・サンダー』の原型はこの映画なのかと。勿論、『プラトーン』とか『地獄の黙示録』とかもパロってたけど、オープニングシークエンスとか、それっぽかった。

全編を通して流れる倦怠感と這うような狂気が画に焼き付いていて凄い。ロメロの『ゾンビ』もそうだけど、この手の映画は実際の上映時間が長いことに意味がある。

最初はフザケたやつにしか見えない主人公達が、だんだん必死に足掻いているように見えてくるのが興味深い。治しても治しても死んでいく患者、治したら戦線へ送り返される患者。フザケ続けていないとおかしくなってしまう場所に彼らはいるのだ。銃撃戦も砲撃も機銃掃射もないけど、マッシュは確かに戦場にあると思える。

即興で付け加えられたという最後の晩餐構図の「嘘葬式」場面が、歌も含めて素晴らしい。普通の映画ならドラマチックでウェットに演出するところを、乾いたトーンでシニカルに描いたことが、逆にあの場面を特別なものにしている。棺桶を覗き込んで別れの品と言葉を送る面々は、皆どこか羨ましそうな表情をしている。

史上初、劇中で「ファック」を言わせた映画は、ブラックコメディと反戦映画として絶妙なバランスの上に成り立たせている傑作だった。