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M★A★S★H マッシュのodyssのレビュー・感想・評価

M★A★S★H マッシュ(1970年製作の映画)
2.0
【今見て面白いと言えるのか】

DVDにて。

この映画、今の日本で見てはたしてどの程度面白いと思えるのか、疑問です。作品に芯がなくて、見ていて退屈してしまう。DVD同時収録の解説を見て、作る側がどういう工夫をしたか、どこが斬新なのかは分かりましたけど、だから面白いと感じられるかというと、それはまた別の話。いくら技巧を凝らしたって見る側には退屈極まりないという場合だって珍しくないんですから。

例えば、ドキュメンタリー的な手法を意識して採用したというけれど、それとこの作品のブラックユーモアは背馳してませんか? ブラックユーモアは自然な描写の中では感知しにくいわけで、意図的に場面や会話をフィクショナルにしてやらないと効果を発揮しないと、私は思うんだけど。ブラックユーモアが本当に効いていれば、うなずく人と怒る人に分かれるだろうけど、今の日本人がこの映画を見てもうなずきも怒りもせず、ただただ退屈するだけに終わるんじゃないでしょうかね。

実際、作品に芯がないことはアルトマン監督も分かっていて、それでスピーカでの放送シーンを繰り返し入れたということだけど、あれで芯ができているとはとても思えない。

私の考えでは、この映画は見かけ以上に1970年頃のアメリカの雰囲気に依存しているんじゃないか。ヴェトナム反戦運動が盛り上がり、反体制運動が盛んだったアメリカ。それは英独仏や日本など先進国に共通した現象ではあったけれど、ヴェトナム戦争当事者だったのはやはりアメリカであって、そのアメリカ人の厭戦気分やこういう状況から逃れてまったりしたいといううんざり気分が、この映画に結実しているのではないか。主人公たちのおふざけのような行動こそ、厭戦気分の表れでしょう。

DVD解説でも指摘していますが、この映画は朝鮮戦争が舞台になっているようではあるけれど、それはカムフラージュなので、ヴェトナム戦争であってもおかしくないような画面に作られているそうな。でも、そういう「普遍性」への努力って、たいていはどっちつかずの失敗に終わりやすいんですよね。
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