こしあん

アーティストのこしあんのレビュー・感想・評価

アーティスト(2011年製作の映画)
3.7
・セリフがない(字幕での言葉はたまにあります)
・音がない(音楽はあります)
・色がない(効果的に色が使われるシーンもあります)

シブがき隊のデビュー曲「NAI・NAI 16」を歌い出してしまうくらいの「ない・ない・ない」尽くし。

今のこの時代に、あえて白黒&サイレントで描き上げる、古き良きハリウッドの黄金期を舞台にしたロマンティックなラブストーリーです。
色やセリフのない世界で、俳優さんだけでなく、主人公の飼い犬役の“犬優”の細やかな演技が光ります。

無駄なものをそぎ落としたサイレント映画から観客が読み取るもの。
それは、トーキー映画よりも、受け手によってさまざまな違いがあるのではないでしょうか。

ヘタにたくさんの言葉で飾られるより、無言で見つめられるほうがグッとくるというもの。

私は、この映画のラブストーリー的な部分よりも、観客を楽しませる、笑顔にするという、エンターテインメントの素晴らしさと難しさについて考えさせられました。
そして、言葉のいらない上質なエンターテインメントは、世界中の人々の心を動かすことができるということを、少し羨ましく思いました。

この映画はハリウッドの黄金期を描いているけれど、実はフランス映画。
アメリカのお家芸とも言える映画を題材にした、こんな素敵な作品をフランスに作られてしまったなんて、アメリカ的にはかなり悔しかったのではないでしょうか。
でも、その作品にアカデミー賞を受賞させるアメリカの懐の深さも素晴らしいと思います。

日本の国技である相撲界で外国人力士の活躍が目立ち、強い日本人力士がなかなか出てこないことに悔しさを感じつつも、相撲界全体が盛り上がるのは嬉しいし……。
なんていう複雑な感情に似てますかね?……似てないかも😅
こしあん

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