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奥様は顔が二つのtapes201のレビュー・感想・評価

奥様は顔が二つ(1941年製作の映画)
4.2
DVD。

ガルボは『我が墓標』と切り捨て、キューカーは駄作と見做したガルボ引退作。キューカーのめっちゃ速い緩急自在な演出は、ガルボの大きなサイレント的芝居を上手く利用してガルボも応えてちゃんとデフォルメしてますねぇ。

水着ありスキーあり、ダンスありで体当たり的に凄いけど、カリンの設定がキャンピングカーでウロウロしながらスキーのインストラクター、ってソローの『森の生活』というかヒッピーの走りか。

当然キューカーは狙ってたんだろうけど、その素っ気ない芝居や佇まいとNYでのデフォルメされた華美な感じのでかい芝居のアンビバレンツは中々得難い感じで、メルヴィン・ダグラスがかなり上手いことカバーしてるにしても、これ誰ができるかと考えたらリタ・ヘイワースなんだけど、やはり、ガルボだからこそ、って感じはある、というか、それが彼女から神秘性を剥ぎ取ることになり引退作となった、ってのは皮肉というより悲劇だとは思う。

しかし、冒頭シーンからいきなりロッジ到着シーンに切り替わり、そこからの10分位はまさに神がかり、というか、個人的に呆然とする感じの怒涛の流れ、そして2階に上がってパジャマ姿(!)でメルヴィンダグラスにベッドの上で猫のように絡みつく様、随所に見えるふとした目線はやはり凄まじいものがあるように思う。

秘書役でガルボを影に日向に支えるルース・ゴードンも素晴らしいし、若い!しかしながら、ニノチカが良くて何故これが駄目なのか、ってのは本当にそう思うし、また同時に、そういうことなんだよな、ともおもうけど、ただただ、これがガルボ引退作、というのは惜しい、マジで惜しい、という感じですが、偶像/虚像を破壊して役者としてらさらに、という願いを偶像崇拝者達が破壊、拒否、俺たちの偶像を壊すなよ、馬鹿野郎、とか、そういうことなんだろうな。あまりにも、あまりにも。
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