緋里阿純

ザ・デプスの緋里阿純のレビュー・感想・評価

ザ・デプス(1989年製作の映画)
3.0
海底1万メートルに作られたアメリカ海軍基地“ディープ・スター・シックス”。そこに隣接するミサイル基地建設の為に派遣された11人のクルーが、未知の海底生物に襲われる。

監督は『13日の金曜日PART1』のショーン・S・カニンガム。クリーチャーデザインを『ザ・フライ』のクリス・ウェイラスが手掛けている。

海底版「エイリアン」といった作品で、閉鎖空間で人数が減っていく展開は定番。予定されていた4ヶ月という建設期間内にミサイル基地の建設が終わっておらず、既に半年を限られた空間で過ごしている為、作業員達の中で鬱憤が溜まってピリついているという設定は優秀。

しかし、肝心のクリーチャーがラスト30分程でようやく姿を現す為、そこに至るまでが酷く退屈。ようやく姿を現したかと思えば、とてもシートラックや作業艇を損傷させられるだけの大きさではなく、強さもイマイチ感じられなかったのは肩透かしだった。
甲殻類の様な表皮やカニのハサミの様な腕、大きく3つに裂ける上顎と、深海生物らしいビジュアルは良いが、着ぐるみ故か動きがワンパターンで鈍重なのも恐怖より可愛らしさが勝る。あと、意外とつぶらな瞳。

登場人物達の苛立ちや行動が裏目に出る点は、こちらまで観ていてイライラさせられる。
特に、作業員の中で1番追い詰められていたシュナイダーが酷かった。ミサイル放棄の手順に従った事よる核弾頭の臨界点リミットは仕方ないにせよ、仲間を見捨ててハッチを閉めたり、精神錯乱により1人で脱出艇で逃げ出す様は本当に見苦しかった。唯一、憎まれ役のゲルダーを空気式の銛で誤って刺し殺してしまったシーンは笑えたが。
正直、クリーチャーによる被害より、人的要因による被害の方が深刻ではないかと感じる。

「ここから出たら結婚しよう」「帰ったらハンバーガーが食べたい」「帰ったらウチの牧場に来ない?」と、死亡フラグのオンパレードな台詞の数々は笑える。無事回避出来たものもあるが。

ラストで最後の盛り上げと言わんばかりに、コリンズとマクブライドが襲われる展開は良かったが、減圧に耐えられるだけの生物が何故深海でヒッソリと生活していたのかは疑問。あと、やっぱりコイツ何か可愛い(笑)

時代を感じさせるミニチュアのセットや、クリーチャーの着ぐるみ感は愛嬌だが、とにかく脚本が悪いと感じた。もっと徹底的にクリーチャーを狡猾にし、人間達の最善手を上回って追い詰めてほしかった。
緋里阿純

緋里阿純