中田秀夫監督作品、音楽は川井憲次。
最初こそとっつきにくい印象を受けたが、なかなか面白い。現実と仮想の世界が入り混じるという演出自体は真新しいものではないものの、本作の場合はその構造と世界観がかなり独特。チャットでのやり取りを文字だけで表現するのではなく、あたかも現実世界のように構築しているところが面白い。通路を回線に見立てているところなんかは本当にユニークだ。
仮想世界でしか繋がることができなかった若者たちが、死というリアルな出来事に対し現実世界でアクションを起こしていく姿は青春映画っぽくて好き。
しかし、衝撃的なラストを迎えた後の彼らは一言も会話を交わすことはなく、一人また一人とその場去っていく。ネット上での薄っぺらい関係性が凝縮し露呈されているシーンだ。
本当に死にたかったのは、助けを求めていたのは、誰かにもう苦しまないでと言われたかったのはウィリアム本人だったのだ。中田監督のイメージからホラースリラー系統の映画かと思いがちだが、本作はなんともやるせない切ない人間ドラマである。
あとアーロン・テイラー=ジョンソンとマシュー・ビアードがふんわりと優しい天使のようなキスをしておったわ。ワイ、眼福。