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ハンニバルのLzのレビュー・感想・評価

ハンニバル(2001年製作の映画)
3.9
また更にレクター博士の魅力に引きずり込まれてしまった。

冒頭から終始、不気味さと不穏さ、陰鬱さと、他では味わえない理知的な雰囲気のホラー、サスペンス劇を堪能。
羊たちの沈黙を初鑑賞した時も思ったけど、このお高くつくような雰囲気がいい。前作はレクター博士が背景にいた内容だったけれど、本作では中心。だからレクター博士の陰の魅力だけでなくそれ以上を味わうことが出来た。でも羊たちの沈黙の方が好きなのは変わらず。横暴さより冷静さが際立っている方が惹かれるのかも。

内容的には非現実的な現象ばかりなのに、鑑賞中は現実を直視させられてるかのような感覚だった。現実と非現実の狭間を味わうこの感覚。けれど本作では、よくあるその曖昧さが取り除かれ、その狭間が明確。これはファンタジー作品ではないから、確かに当然のこと。この映画の中では、すべてその現実世界で実際に起こっている。だからこそ、現実の中に非現実が取り込まれたという、その作風がまた魅力だった。

そんな感じの映画ならサスペンスでいうとたくさんあるけれど、このレクター博士のシリーズはやっぱり唯一無二に感じる。映画だからあり得ないことしてるよね、で終わらせない展開が待っている。

脳みそのシーンはさすがに驚嘆。レクター博士、かっこいいと思ったらそれをすぐに覆してくるほどの狂人であるのも確か。その直前まではレクター博士のスタイリッシュで野生的なかっこ良さに酔い知れていたのに…

前作含めそうだけど、レクター博士が登場すると安心感に満たされてしまう。誰かを殺そうと目論んでる姿を見ても、怖いというより惹かれてしまう。無闇に信じてはいけないのだろうけど、クラリスも彼へ少なからず信頼を置いてるからこそ、最後の狂気が活きる。


チープに感じないグロテスクなシーンも見られて満足だった。美しく過激な映画は素敵。
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