アニマル泉

次郎長三国志 甲州路殴り込みのアニマル泉のレビュー・感想・評価

5.0
東宝版の最終回。第3部から1年経っているので役替えが多くてビックリ。綱五郎が松方弘樹→曽根晴美、仙右衛門が津川雅彦→矢野圭二、お仲が丘さとみ→安城百合子、大熊が水島道太郎→山本麟一となり、大政は中村竹弥→大木実が帰ってきた。重要な役どころの変更にも関わらず撮ってしまうマキノはさすがだ。
前半はお仲救出の殴り込みである。道中が素晴らしい。歌いながら次々と陣羽織を脱ぎ捨てていく!そして待ち構える猿屋の勘助(石山健二郎)たちから目潰し粉の一斉攻撃、雪が降るような美しい白粉のなかで次郎長一家が三度笠を宙に放り上げて大出入りが始まる!文句なしの素晴らしさ!鉄砲、綱五郎も拳銃で応戦する、次郎長も拳銃をぶっ放してお仲を救い出す。石松(長門裕之)が片目を斬られる。
新しいゲストが七五郎(待田京介)とお園(南田陽子)。南田が素晴らしい。このシリーズでやっとマキノらしい、いい女が出てきた。女郎になって金を工面しようとする。南田が敵が来たと長槍で戸板を突き飛ばすとお仲だった、という場面の身のこなしが見事だ。お園は東宝版は越路吹雪が名演だった。マキノはいい女が出てくると活きいきしてくる。
後半は兇状旅とお蝶の死である。「みんな笑え!」と子分たちがお蝶のために涙を隠して笑う名場面、そしてお蝶と子分たちの臨終の場面、次郎長はあえて外して、お蝶の墓、ここも見事なロング、次郎長は耐えに耐えて、遂に久六(遠藤辰雄)一家との弔い合戦で爆発する。この流れの作り方がマキノの至芸だ。ラスト、次郎長のアップ、「お蝶、清水に帰るぜ!」遺髪を握りしめて御用の提灯が無数にひしめく中へ次郎長一家が突入してエンド!涙涙のラストシーン、参りました。
次郎長シリーズはマキノのグループショットの上手さが堪能できる。グループショットの的確な切返し、ドンデンの入り方、惚れ惚れする鮮やかさだ。南田が七五郎と二人で話したいと次郎長一家から外す場面のドンデン返しは見事だ。
アニマル泉

アニマル泉