宇尾地米人

黄金の宇尾地米人のレビュー・感想・評価

黄金(1948年製作の映画)
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『黒蘭の女』、『シー・ホーク』を手掛けた大物プロデューサーのヘンリー・ブランク。『マルタの鷹』、『パナマの死角』を手掛けたジョン・ヒューストンがワーナー・ブラザース製作でこの監督にあたり、興行・批評の両面で大成功しました。これが出世作になりました。監督デビュー作からタッグを組んできたハンフリー・ボガートが主演し、実父のウォルター・ヒューストンが助演。アカデミー監督賞と助演男優賞を受け、この一作で実の親子が受賞を記録する最初になった。"ボギー最高の演技"と認める評論家もおりますね。それだけ、この見応えたっぷりの演技と男ドラマはお見事でした。

「黄金は魔物だ。黄金は人を変えてしまう」「宝が人を惑わすか。人が宝に惑わされるか」そういう話です。男3人が一攫千金を目論み、シエラ・マドレ山脈へ出発した。頑張って金鉱へ着き、砂金を得るも、4人目の男が出てきます。「俺を仲間にするか。殺しておくか。さあどうする」3人の男たちは話し合い、多数決をとる。どうしてやろうか。すると山賊連中が現れ、武器を要求される。当然、渡せば殺される。さあどうするか。

大金を手に入れ、女遊びに興じたい野望があれど、女性が全然出てこないあたり。男3人の砂金採掘は当然のように、結束力虚しく、対立が始まっていく。あいつは金を独り占めするつもりだ。奴は俺を撃ち殺すつもりだ。黄金の魔力、人間のしぶとさ、欲深い男の苦労や哀れがどんどん出てきます。そしてついに争い始める。欲深い人間は争わずにいられない。山賊と撃ち合い、仲間同士で銃を向け合い、殴り、奪い合う。この作劇、演技、撮影がいかにも男の危うさ、人間の弱さを曝け出してハラハラさせますね。見た目こそしっかり逞しい男たちが、これだけ危うい。こういうところがジョン・ヒューストンの真骨頂。映画史に残る男映画。これがどんなラストを見せたか。どんな表情を見せて終幕させたか。最後の最後まで、この人間ドラマは目が離せない。
宇尾地米人

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