幕のリア

トーク・トゥ・ハーの幕のリアのレビュー・感想・評価

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)
4.0
かたやバレリーナ、かたや女闘牛士。
その神々しさに一方的に惹かれる男。
母親の面倒だけ見てきた世間知らずの若者、ベニグノ。
ライターとして心惹かれる対象を見つめる男、マルコ。

オープニングが素晴らしい。
タイトルと共に幕が上がり、前衛劇を見つめる男二人。
マルコは涙を流し、隣の席に座るベニグノはそれを二度見。
激しく予想のつかない動きで舞台を駆け回る女、付き人かのように、ぶつかりそうな椅子を払いのける男。
女性が男の人生を支えるのではない。
男が女に付き添わせてもらうのだ。

事故によって眠りについた二人の女性を見守るベニグノとマルコが出会い理解を深めていく。
いや、ベニグノの狂った純愛にマルコが惹かれただけだろう。
彼は観察者に過ぎず、マルコが愛を寄せたリディアはやがて亡くなり、ベニグノのアリシアに対する偏愛を見つめるしかなくなる。

サイレント映画「縮みゆく恋人」をベニグノが劇場で見た翌日。
化粧まで施され横たわる眠れる美女アリシア。
映画の話を聞かせながら入念にマッサージを続けるベニグノ。
劇中の縮んだ男は永遠の愛に身を投じるべく茂みの洞穴に身を潜める。
下品なエロ漫画のような直接的な表現を避けるのは当然として、どこか物哀しさを伴っており、性犯罪と言っては身も蓋も無い行為にそっとベールを被せている。

その後のストーリーは割愛。
エンディングは「マルコとアリシア」
どんな言葉や触れ合いが、互いの欠落した物をその先埋めていくかは観客に委ねられ、オープニング同様観劇に引き戻される。


〜〜補記〜〜

宣教師の”性”職者ぶりを揶揄するシーンは「バッドエデュケーション」同様。
聖職者もこんなんだから、俺らもまともなわけないじゃん、と苦笑と自嘲が聞こえてくる。

エンディングの前衛ダンス。
大勢の男に導かれ踊る妙齢の女性。
時折マイクを向けられ吐息を漏らす演出。
ギャグにしか見えないのだが。
オープニングの前衛ダンスも、涙するマルコを二度見するベニグノ。
てっきりそういう演出かと思えた。
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