YasujiOshiba

遊星からの物体XのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
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備忘のために

- 『ファーストコンタクト』を見終わって、いてもたっていられなくなってクリック。

- これ1982年公開の作品だけど、クリーチャーの造形があまりにみごとで、今見ても怖い。それもそのはず。SFXにクレジットされているロブ・ボッティン(1959 - )という人がすごいんだよね。
 ちょっと調べて見ると、ロブ・ボッティンが師事したのがリック・ベイカー(1950 - )で、ジェシカ・ラング版の『キングコング』(1976)なんかのSFXを担当したアーティスト。キングコングのSFXは当時すごく話題になったのを覚えているけど、そのリックの最初の仕事というのが、なんとあのリンダ・ブレアの『エクソシスト』(1973)で、巨匠ディック・スミス(1922- 2014)の助手だったというのだから驚いちゃう。
 ディック・スミスといえば、『小さな巨人』のD.ホフマンや、『エクソシスト』のブレアやM.フォン・シドー、それに『ゴッドファーザー』やマーロン・ブランドに、『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロのメイクで有名な人。
 あのクリーチャーには、なるほどそんな歴史が流れ込んでいたのかと思うと、なんだか感慨深くなっちゃうよね。

- 今回初めて気がついたんだけど、音楽はエンリオ・モリコーネだったんだ。あの特徴的な低い電子音は、ずっとカーペータンズが作ったものだと思い込んでいた。
 実のところ、モリコーネ自身は前衛的な現代音楽を得意とする人。クラシカルな音楽が得意のような印象があるけど、むしろ伝統的な演奏を破壊的に乗り越えてゆくような楽曲を得意としているわけで、この映画なんかは、その本領発揮というところなのだろう。

- それにしても、ラストシーンがなんて素敵なんだろう。この作品は「黙示録的3部作」〔本作と『パラダイム』( Prince of Darkness)、『マウス・オブ・マッドネス』(In the Mouth of Madness)〕の一つだと言われているけれど、まさに「世界の終わり」というのは実に映画的な美の表象のひとつなのだよね。

- 久しぶりに見直して、そんな感慨をあらたにすることができた。それにしても、配信ってのはいいね。今回は iTunes だったけど、これだけ気軽に名作を振り返ることができる環境はすごくありがたい。

ぼくはね、映画館はとうぜん無くならないと確信しているし、DVDやBDだって喉から手が出るようなパッケージは生まれ続けると思うのだけど、配信サービスが映画の可能性を開いていると思うのだよね。ほんと、よい時代になってきたものだ。

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2019/6/25
娘たちのお相伴でNetflixで再度鑑賞。何度見ても面白い。

モリコーネの音楽だけど、あのベースシンセサイザーはやはりカーペンターが自ら手を加えたものでもあるみたい。モリコーネは自分のスコアを使われたと言っているけれど、カーペンターは自分で編集したという。まあ、どっちが正しいかわからないけれど、出来栄えが最高なのはかわらない。

黙示録三部作ということで、『マウス・オブ・マッドネス』は見た。面白かった。けどまだ『パラダイム』は見ていない。次はこれをなんとか見てみたいもの。

ラストはたしかに黙示録なんだろうな。ラストのセリフは暗示的だ。冷戦の時代の国際的な疑心暗鬼のパラブルとも読める。

MacReady:
If we've got any surprises for each other, I don't think either one of us is in much shape to do anything about it.
(お互い驚くようなことがあっても、おれたちはどちらも、何かができるって状態じゃないからな)
Childs:
Well... what do we do?
(じゃあ、どうればいい?)
MacReady:
Why don't we just wait here a little while? See what happens.
(ここでしばらく待ってみるってのはどうだい。何が起こるか見てみよう)
YasujiOshiba

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